自分の中の当たり前や常識は、全てにおいて通用すると考えがちですが、実は場所や環境によって違ってくるのです。
でも案外そのことに気づいていない人は多く、自分の当たり前、常識が通じないことでしんどくなってしまう人がいるのです。
こんな例がありました。
Aさんは大手企業(R社)に勤めていたのですが、会社が吸収合併したのを機に早期退職をされて、同じような商品を扱う中小企業(O社)に転職されたのです。
O社にとって、R社から転職してきたAさんは即戦力になると大歓迎でした。
しかし3ヶ月も経つと雲行きが怪しくなってきたのです。
AさんはR社時代に培った人脈で次々と仕事をこなしていこうとします。
そして仕事をしていくうちにR社にいたAさんからしたら、O社のやり方は時代遅れな感じがしてきたのです。
なのでAさんは上司に次から次へと、R社のようなシステムや流通の改善提案をしていきます。
しかしO社の上層部からしたら、Aさん言っていることは分かるのですが、その改善にはそれなりの時間と労力とお金も掛かります。
また今までのやり方で問題がないのにAさんに為に変える必要があるのか?とも思ったのです。
間に挟まったAさんの上司は、Aさんの言っていることはわかるけれども・・・・・な感じで、Aさんの提案にお茶を濁す日々が続いたのです。
その間もAさんは会社に改善提案を続けます。
Aさんからしたら仕事を取る自信はあるのに、改善してくれないとお客さんに迷惑が掛かるから仕事が取れないという思いがあったのです。
時間が経つにつれて、AさんとO社の間には溝が生まれてきます。
お互いがお互いの常識をぶつけ合うのですから、上手くいくはずがありません。
結局Aさんは精神的に不安定になり、退職せざる得なくなったのです。
今回の問題は二つ。
Aさんが自分が培った経験を当たり前(常識)だと思いこんだこと。
O社が自分たちがやってきた事への自負心が強かったこと。
どちらの言い分も分かりますが、何が足らなかったかというとコミュニケーションと柔軟性だったのだと思います。
日本では「所変われば品変わる」という言葉があります。
「土地が変われば、いつもは当たり前と思っていることも違ってくる。」という意味です。
これは土地だけの話ではなく、人の生活環境的なものも一緒だと私は思うのです。
自分(自分たち)の当たり前は周囲の当たり前ではない事に気づかず、自分(自分たち)の我を押し通そうとして人間関係でつまづいたり、失敗したりするのです。
残念ながら当たり前を当たり前ではないとは、誰も教えてくれません。
ビジネス本などで書かれていて気づいたとしても、自分の当たり前がおかしいことに気づき変えれる人は早々いないのです。
なぜなら、それほどに思い込みは頑固で強く人の心を支配しているものなのです。