漆黒の闇の中は暗いだけでなく、凍えるような寒さです。
私は一体どこに行こうとしているのか分からなくなり、アリスに聞いたのでした。
「どうしてこんなに奥へ奥へと行こうとしているの?」
「あなたからしたらかなり遠いでしょうね。」
「うん?どういうこと?」
「このトンネルは私の遠い記憶の年数の長さなのよ。私の帰りたい所までこんなに月日が経ってしまって離れているってことなの。」
「そうなんだ。でもこんなにも月日が流れているのに、まだ戻りたいと思うほどアリスにとっては大切な記憶なんだね。」
「うん。凄く大事なもの。とても温かい記憶。私を助けてくれると言ってくれるあなたの事も嫌いじゃないのよ。でもね・・・。」
こんな会話をしながらも、トンネルの奥へと吸い込まれていきますが暗闇は続いたままで一向にアリスの行きたい記憶にまでたどり着く気配がありません。
するとアリスはイライラしたように
「やっぱりなかなかたどり着かない!」とつぶやくのでした。
そんなアリスと話はしている一方で、私はもしかしたらこの漆黒のトンネルは、アリスの執着心の表れなのではと考え始めたのでした。
魂の居た場所の想いを手放せないまま転生を繰り返したアリス。
転生するという事は何かしらの経験を積む為といわれていますが、転生しても元居た場所が忘れられないアリスにとっては、寂しさや孤独感の経験値が増えた分だけ執着心が強くなるという結果をもたらしてしまっているのではないかと思ったのです。
だから今奥へと向かっている漆黒のトンネルの寒さは孤独さを。長さは、執着した年月を表しているのではないかと考えたのです。
「怒らないで聞いてね。ごめんねアリス。あなたが元居た場所にたどり着きたいと思うのなら、その元居た場所、その温かかった思い出を手放さないとたどり着けないのだと思うよ。」
そう私が言った途端、アリスは涙をポタポタ流しながら大号泣したのでした。